《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「くそ…っ…スズを守るのは俺の役目なんだ! あんな奴に…」

 悔しそうに俯きながら呻く様に言葉をもらすセィシェル。やはり以前何があったのかは答えてくれない。それでも、昔から今もなお、セィシェルがスズランを見守ってくれている事は事実であり、感謝しかない。
 だからこそライアにもちゃんと感謝の気持ちを伝えたかった。

「セィシェル、ずっと守ってくれてありがとう! でもわたし、ちゃんとライアにもお礼を言いたい! ……それだけなの」

 何とか気持ちを隠し通せた。そう思った矢先セィシェルに念を押される。

「分かった…。だったらスズは俺の気持ちに応えてくれるのか? あいつの事は本当に何とも思ってねえって事だよな?」

 その問に返す言葉が出てこなかった。
 セィシェルの気持ちに応えたくない訳では無いが、自覚してしまった自分の想いだって無視は出来ない……。
 静まり返った部屋。スズランは気持ちを決めて口を開いた。

「わ、わたしは…」

「いや、いい。今はまだ答えないでくれ。俺にだって譲れない物位あるんだ」

「ゆずれないもの?」

「……親父呼んでくる。親父が一番付きっきりで看病してたんだからな! あとソニャの奴も。だからちゃんと体調治せよ」