疲れのせいか、つまづいて膝をついてしまった凛を、善兄が背後からナイフで突き刺そうとしていた。
凛はナイフに気づいて逃れようとするが、足がもつれて動けない。
……ダメ。やめて。
凛を、殺させはしない。
もう誰も、傷つけさせない。
こんな無益な闘いを、続けないで。
自由になった今、私は駆け出した。
ふらつく足で、ステージを飛び降りる。
間に合え……!
全速力で走って、善兄と凛の間に割って入っていった。
「い……っ」
「幸珀、どうして……!?」
――ポタリ。
床に1滴の血がこぼれ落ちる。
動揺を隠せない善兄の視線の先にあるのは、凛に刺さるはずだった刃を、盾になって包んで止めた、私の血だらけの両手。
目を丸くしているのは善兄だけではなく、朔も師匠も、もちろん凛もだった。
主に左手の方が傷がひどく、血は止まらずに流れ続けている。



