「ま、せいぜい頑張りなさいよ。
あの子、ただ救えば何とかなるわけじゃなさそうだし?」




 それは救う以外に何か、必要ってことか?





「……あの女、親の職業がやばい。——眉目秀麗、文武両道。アメリカ人の父親は世界一のミュージャン、
そして日本人の母親は、世界一のピアニスト兼弁護士ときた」




「!」



 俺は奈々の言葉に、思わず息をするのを忘れそうになった。



 おいおい、医者の息子が暴力集団の頭ってだけでも可笑しいのに、今度は弁護士とミュージャンかよ……。



 責任重すぎて、 ホント呆れる。




「暴力集団の亜空に引き入れたのがバレたりでもしたら、詰むよ?」



 めぐは、笑いながら言った。



 いやはや、全くもってその通りだ。


 でも、今辞めるわけにはいかない。



「…… 要は、バレなければいいんだろ?」





 俺は、笑ってそう言った。




 ——友達がいないなんて、もう言わせない。




 死にたいなんて考えるのは、俺だけで十分だ……。