「あづ、今日もありがとな。楽しかった。おやすみ」

「……ん、おやすみ〜」

 俺は、夜の十時頃に、怜央が自分の家の中に入ってくのを見送った。


「はぁ……」

 俺は、怜央の家の塀に寄りかかって、ため息をついた。

 怜央はいいなぁ。俺と違って金に困ってなくて、時間潰しにたかりをやってるだけだし、
帰る家があるし。

 俺とは正反対だよな。

 ……こんなこと考えててもしょうがないな。

 寝る場所見つけないと。

 それに、飯食べるのに人気のない公園とかも探さないとだし、夜ご飯コンビニで買わねぇと。

「あ、あづいた!やっと見つけた!!」

 コンビニを探しながら歩いていると、恵美が声をかけてきた。

 茶色い髪に、二重のクリっとした目をしたこいつは潤の双子の妹で、亜空の一員だ。


 恵美の隣には、ワインレッドの髪をした男がいた。

赤羽奈々絵(アカバナナエ)

七ミリくらいある長いまつ毛、ちっちゃな顔。二重の瞳。そんなどっからどう見ても美少年って風貌をした、中一の時からつるんでる男だ。ちなみに、こいつも亜空に入っている。

「……お前、また金たかりに行っただろ。潤がすげー心配してたぞ。俺たちもだけど」


「後で連絡しとくわ。……俺、もう家帰るから。また今度な」

 大嘘をついて、俺は奈々達が向かうのとは逆方向に向かって歩いた。

 笑える。……家なんて、帰れるわけないのにな。

 
「おっ、あった」

 それから15分くらい歩くと、俺は人気のない公園を見つけた。

 公園のベンチに座って、夜ご飯を食べた。


「……はぁ。まず」

 ダメだ。やっぱり独りで公園で好きな物を食べても全然美味しくねぇ。惨めなだけだ。


「はぁ。……死にたい」

 小さな声で呟いた。

 こうやって一生自分の惨めさを実感して生きていくくらいなら、いっそ死んだ方がマシだ。

 そう思うのは、おかしなことなのだろうか。