——違う?

 そう言われた瞬間、心臓がまるで、図星だとでも言うかのように、ドキッと音を立てた。


 俺は死にたくないのか?



 そんなわけない……。


 俺は、今すぐにでも死にたいんだよ……。




 死にたくて仕方が無いんだよ……。




「お兄さんは死にたいんじゃなくて、
他に欲しいものがあるんじゃないんですか?」



 得意げにそう言われると、不意に、
母親の笑った顔が脳裏をよぎった。


「…………」



 ……まさか、俺はこの女の言ってることが本当に図星なのか?




 ——俺は本当は死にたくないのか?




「黙れよ。俺は死にたいんだよ。……いや、死ななきゃいけないんだよ」


 


 俺は四つ這いになっていた体を起こし、
少女を真上から見下ろして、雑に言い放った。




 ハハ、死ななきゃいけないか。



 笑える。



 正当化して何がしたいんだか。







 それでも、死なないと人生は変わらない気がした。




 一生親に愛されず、頼る友達も出来ず、
虐待に怯えながら生きていくなんて……。




 そんなのはもうゴメンだった。







 死ななきゃ人生はどうせ変わらないんだよ。





 母親は俺に、ごめんも何も言ってくれないんだよ……っ!






「恐らくですけど、例えお兄さんが死んでも、
お兄さんの願いは一生叶いませんよ?」