《——潤、緊急事態だ。
 たぶん、あいつはここで死ぬ気だ》





 奈々が空我の私情を話し終え、グループ通話が終わった直後、まるで入れ替わるかの如く、
奈々から俺に個人通話がかかってきた。






《あいつは、
東京の矢吹翠泉(ヤブキスイセン)に向かっている!》




 ——矢吹緋色翠泉高等学校(ヤブキヒイロスイセンコウトウガッコウ)。



 緋色、それは治安の悪さを示す血の色だ。




 そこは、東京の暴走族のNo.5までの幹部が集う、東京で最も治安が悪い学校。


 暴力沙汰やバイクにまつわる事故はその学校の生徒が起こさない日はないと、そう言われているとこだ。



 ましてや、今は昼。





 その学校の奴らは屋上にたむろしているか、駅前の路地で暴力をしているかどっちかだろう。


 昼は夜の次に、荒れに荒れてるんだ。



 つまり、空我はその荒れた学校のある最寄り駅の路地に向かったと、そういうワケだ。