「奈々……」






 外からでも、張り詰めた雰囲気に
なってるのが痛いほど分かってしまった。





 ——集中治療室。





 壁の天井近くに接着されたそう書かれた小さな看板を見て、徐々に顔が尋常でないほど青ざめていく。




 ……やめろ、悪い方向に考えんなよ!





 もう嫌なんだ、あいつが死にかけたり
するのを見るのは。





そうだというのに、それをさせてしまった
のが自分も当然だなんて。





こんなことなら、何も言わずに
アメリカにでも何でも、
行きゃあよかったんかな……。





「あづ!!
奈々絵はっ!?」






 顔面蒼白のめぐが俺の隣へ走ってきて、
奈々の様子を伺ってきた。







「……っ、わかんねぇ」








 まさか、思いもしなかったんだ。






 体力なんて、凡人以下どころの話じゃ
ないって、そう散々言っていたのに、




それなのに、俺を意地でも追いかけてくる
なんて。








 頼むから……




たとえ、忌むべき子供の友達だとしても、




母さん、どうか、奈々絵を助けて……。