あづはそういい、俺に片手を差し伸べた。 “奈ー々絵!” ふと頭に、大好きだった姉さんの声がよぎった。 この手を取ったら、俺は自分の名前を 呼ばれるのが、嫌じゃなくなるのだろうか……。 呼ばれるたびに、親を、姉を、 家族を。 あいつらは死んだのに自分はのうのうと 生きている事実を、 思い出さないで済むのか? そう思って 俺が恐る恐る顔を上げると、 あづはしょうがないなぁとでも 言いたげに、 今までで一番晴れやかな顔で、俺に笑いかけた。