「奈々!
 もー、大丈夫っ!?」




 走ってからすぐに恵美に追いつかれて、俺は腕を掴まれた。



「ケホっ」


 微かに出た咳を、恵美は聞き逃さなかった。



「わー言わんこっちゃない!ゆっくり歩こ。ね?」




 一体俺が誰のせいで走ったと思ってんだ
コイツは。



「……おまえがんなこと言うからだろ」



 しまった。



 ムシャクシャして


つい、本音が喉元からでかかった。



「えっ? それって……」




 恵美は、俺の顔を確かめるように覗き込んだ。