「ゴホ、ケホっ……」




 煙草の煙でむせて、咳が止まらなかった。



 ——いつもそうだ。



あづの顔を見ると、気が狂いそうになる。




 素直すぎて、それが羨ましくて、見てるのすら辛くなる。





 俺はきっと、二度とそんな風にはなれないから。





 屋上から落ちてたせいで、



俺の足はかなり弱ってしまった。



 長時間あるくだけで、倒れてしまいそうになるんだ。


「はぁ……、はぁ……」



 軽い息切れが俺を襲う。


「っ!!」

 一瞬でも気を抜くと、後遺症のせいで、思わず膝から崩れ落ちそうになる。




「……うっ!」



 いつもいつも、頭に浮かんでは無理矢理かき消す、家族の顔。





 ……出来ることなら、俺は死のうとする前の記憶を、全て忘れてしまいたい。