「まぁ抜けたい奴は抜けろ。
 ——ただし、もちろん、総長はこの俺だ」



 俺は足を組んで言う。



「言ってる意味、分かるよな?今亜空を抜けたら、
それは俺を裏切るのと同義だぞ?」



 ——裏切るなら裏切ればいい。



 所詮、時間つぶしと親へのストレス発散のためにと中学時代に作った暴力集団だ。


 そんなものに、結束力なんてあるハズもない。


 まぁメンバーは一応、それなりに選んだつもり……なんだけどな。



「裏切りません!!
 ——私は、一生組長について行きます!!!」


 突如、桜桃は立ち上がるや否やすぐに俺の元へ駆け寄り、叫んだ。




「……桜桃ならそう言ってくれると思ったよ。
 俺の暴走族、虹蘭(コウラン)の組織リーダーに
なってくれるか?」



 俺は立ち上がり、桜桃の手をとった。



 信じてた。



 ……いや、信じたかったんだ、桜桃だけは。




「え、私で……いいんですか?」



 そういう桜桃の手は、微かに震えていた。




「あぁ。それに龍弥!
お前も、リーダーだ!!」




 俺はその手を再度握った後、また叫んだ。



 「俺っすか!?」



 下っ端達のいる数十個の列の2,3列目辺りで
胡座を描いて眠そうにしていた青年が、
さぞかし嬉しそうな声を出して立ち上がった。