「あづ。
てめぇ、いい加減にしろよ」



 潤が部屋を出てから10分ほどがたった頃、キッチンルームには随分と険悪なムードが漂っていた。



 いや、簡単に言うと、奈々がものすごい怒っていた。



「俺達は親友なんじゃねぇのかよっ! 少しは、
俺に許される努力くらいしてみろよッ!!!」



 ソファから立ち上がり、台所にコップを持っていっていた奈々が本当に突然、動きを止めた。



 そして、すぐ近くの棚を左手の拳で勢い良く叩いて、そう八つ当たりのように叫んだ。


そのあまりの迫力に、俺は思わず息を呑んだ。


「奈々さん……」



 純恋はドアの前にしゃがみこんで、かなり怯えた様子で奈々絵を見ていた。




 「ごっ、………ごめん」



 俺はただ奈々から目を背けて、謝ることしか出来なかった。



「ごめんじゃねーよ!!
俺達は……っ!!!」



 ソファに座り込んでいた俺の胸ぐらを掴んで、奈々は悔しそうに泣きながら叫んだ。




「……捨てろよ。だから言ったんだ、何でって」



 俺はまた、奈々の顔を見ずに言った。


 元から俺に、生きる価値なんてない。


 どうせおまえらは俺といたって、メリットも無い。



 それならいっそ、俺を捨ててくれはしないか。




 だって俺から逃げたら、おまえらはまた追いかけようとするんだろ?



 それなら、こんな無価値な奴、お前らから捨ててくれよ……。