「たまには妹を頼ってよ、お兄ちゃん」




 直後、めぐが俺に自分の体を軽く倒れるように
預けて、両腕で俺を抱いた。




「恵美……」




 不意に右目から、透明な雫が零れ落ちた。





 頼ってか。




 兄が妹を頼る。




 それは、兄失格に等しい行為なのではないのか。





「潤は、何があってもあたしの自慢の兄なんだよ。あたしは何があっても、潤を奈々の次に愛しく思うから」



「ハハ」


 力なく、俺は笑った。


 奈々の次ね。



 まぁ……それも悪くないか。




「……いつか、俺を一番に愛してくれる人を見つけてみせる。だから見つかるまで、ちゃんと励ませよな!」






 涙でぼやけた視界の中で、俺は必死に、精一杯の作り笑いを浮かべて、空元気のような無駄に大きな声を上げた。


 終わった。終わってしまった、俺の初恋。




 それでも、叶わなかろうと一緒にいたいんだ。







 俺はそうして、一生涯愛そうとした人への気持ちを
隠し続けて、笑って生きることを、心に誓った。