「ね、覚えてる?
 あんたが中一の時、初めてあたしに友達紹介してくれたこと」




 めぐは俺の頭を撫で、言う。





「……覚えてる。忘れるわけない」


 めぐの手を掴んで撫でるのを辞めさせ、俺は言った。



 中一の時、俺はめぐを奈々絵がいた病院に連れていった。


 あの日のことは、やたら鮮明に覚えてる。



 だってその日は、俺が大事な妹に初めてできた親友を紹介した日なのだから……。





「やっぱ? あたし、あの日奈々に一目惚れしたんだよねー。もちろん、潤があづのこと好きなのもすぐに分かったよ?」





 めぐは懐かしむように言った。



「……うるさい」



 めぐの手をふりほどき、俺は恥ずかしげもなく言われたその言葉を雑にあしらった。



 俺達は学校が別々で、恵美は中学の時から女子寮で暮らしていた。

それなのに。

俺は、恵美が病院にくるには外出許可をとらなきゃだし手間だとわかっていたのに、そうしてもらったんだ。

奈々絵とあづをどうしても紹介したかったから。