*Kissよりギュッと*

だから私は龍がしたように、わざとらしく両目を細めるとこう言い放った。

「新しい男見つけたいからって俺の忠告聞かないってどんだけ飢えてんだよって言ったの誰だっけ。それにガツガツしてるとも言われたけど。すっごい傷付いて私泣いたんだけど」

「美夜、」

たちまちのうちに、龍がオロオロし始めた。

「美夜……俺、」

「あー、どーしてもらおーかなー。ただ謝るなんてサルでも出来るー……」

ツン、と横を向いた私の視界に、焦った龍が飛び込んで来る。

「……ごめん」

いつもは男らしい龍の顔が、今は途方にくれていて凄く可愛い。

ああ、これもギャップ萌えだ。

大きくて逞しくてカッコいい龍の、こんな顔が見られるのは私だけの特権。

心の中でニヤニヤする私に気づかない龍は、どうやって私の機嫌を直そうかと思案しているようだ。

「わかったよ。なんでも一つ言う事聞くから、」

「じゃあ……これで許す」

ドキドキする。

私は膝で立ち上がると、龍に唇を寄せた。

……自分からキスするなんて恥ずかしいけど……でも。

そう思った瞬間だった。

「……生意気」

「……へ?」

クスリと笑った龍に驚いて眼を開けると、その瞳には既にいつもの勝ち気な光が浮かんでいた。