*Kissよりギュッと*

さっきまでお母さんにからかわれて拗ねていた龍だけど、今は上機嫌だ。

「……そっか……」

「それから、あの日の事だけど」

「知ってる。水沢さんと話したから」

龍は僅かに眼を見開いたけどすぐに頷いた。

「……そっか」

そういえば……私も聞きたいことがあるんだ。

「ねえ、龍」

「ん?」

「明日斗とは……その」

明日斗と龍は親友だし、私は明日斗の元カノで……。

聞きづらくて言葉につまると、龍がポンと私の頭に手を置いた。

それから白い歯を見せて私を覗き込む。

「そんなの心配しなくていい。あの後話したし、改めてアイツからラインがきた。明日斗とは今まで通りだから」

「……よかった…」

……良かった。明日斗と龍が友達のままで。

その爽やかな笑顔が、真実だって告げている。

実はそれを一番心配していたから、私はホッと息をついて微笑んだ。

「で、次は俺の番」

「……なに?」

急に龍が不満そうに両目を細めた。

「石井くんとデートで通りかかったって……ホントかよ。デートしたのか」

「あんなの嘘」

即答すると龍は眉を寄せた。

「なんで嘘つくわけ」

「だってあの時は龍と水沢さん、ヨリが戻ったんだと思ったから……私が会いに行ったなんて知られたくなかったもん」

私がそう言って龍を見上げると、龍は呆れたように息をついた。