*Kissよりギュッと*

そんな龍をチラリと見ると、お母さんは悪戯っぽく瞳を光らせた。

「龍はね、早くあなたと二人きりになりたいのよ。ね?龍」

「ちげーよ」

……え。

そうなの?

コクンとお料理を飲み込むと、私はそれを確かめたくて龍をマジマジと見つめた。

「……」

「そんな見んな」

「だって」

……そうならその……私だって嬉しいっていうか…。

「あっはははは!」

私と龍の様子を見ていたお母さんが、弾けるように笑った。

「ああ、可愛い~。若いっていいわね。けどこれ以上あなたを取っちゃうと龍が拗ねちゃうわね。デザートは二階に運ぶからどうぞごゆっくり」

「行くぞ」

ムッとしたように龍が立ち上がる。

「ちょっと龍、」

「龍ったら照れちゃって」

「それ以上言うと店手伝わねーぞ」

「ひどーい」

お母さんは龍をからかってケラケラと笑っている。

「あの、凄く美味しかったです!ご馳走さまでした」

「お粗末様でした。美夜ちゃん、ゆっくりしていってね」

「はい。ありがとうございます……わ、龍、」

イライラした龍が私の手を握ると、店の奥へと歩を進めた。

もう、龍ったら。

私は後ろから聞こえるお母さんの笑い声を聞きながら、小さくため息をついた。