ああ、もう。

私はギュッと眼を閉じると、諦めて言った。

「すっ、好きだよっ。龍がすごい好きっ」

そう言った私の顔を、龍が覗き込もうとする。

「龍が超好きっ。だけど今は恥ずかしいから顔見ないでっ」

「っ、美夜、」

とにかく今は顔、見られたくない!

咄嗟に私は両腕を龍の背中に回すと、龍の胸に頬を寄せた。

「おい、美夜、」

「だって見られたくないもんっ」

ギュウッとしがみつく私に、龍が参ったというように口を開いた。

「お前……反則」


゚*.。.*゚*.。.*゚


「早く食えって!」

「……もう~!急かさないでっ。料理はまず眼で楽しむって、」

「うるせ」

私と龍のやり取りを見て、龍のお母さんがクスクスと笑っている。

今日は龍が、お母さんの小料理屋さん《響き屋》に招待してくれているのだ。

『新作料理の試食を頼みたい』なんて言ってたけど、それは口実。

ダイエットで痩せた私を気遣ってくれているって、ちゃんと分かってるんだ。

「美味しい~!幸せ」

「これはね、鯛と素麺をお出汁の寒天の中に閉じ込めてるのよ」

「見た目も涼しげでこれからの季節にピッタリですね」

「写真はもういいからさっさと食えよ」

龍はあからさまにウンザリして、座敷のテーブルに肘をついている。