*.。.*゚*.。.*゚

多分美夜は、気付いていない。

俺が好きだって事に。

先輩にフラれたばかりで随分切り替えが早いと思われるかも知れないが、先輩の時とは違う感じなんだ。

こんな気持ちは初めてだった。

毎日会いたい、毎日触れたい。

アイツの笑顔を見ていたいし、悲しませたくない。

なのに俺は。


『新しい男見つけたいからって俺の忠告聞かないって、どんだけ飢えてんだよ』


……完全に俺が悪い。

美夜が俺の想いに気付かない苛立ちと、新しい出会いに向かおうとする焦燥感。

瀬沼は男子校で普段から女子への免疫が低いだろうから気が気じゃない。

そこに加えて美夜はとにかく可愛いんだ。

フワフワの砂糖菓子の様な甘い笑顔や、おどけたときの丸い瞳。

それだけじゃない。

怒った顔も泣いた顔も、真っ直ぐな性格も、何もかもが可愛いんだ。

そんな美夜を誰よりも一番近くで見ていたい。

誰からも守りたい。

なのに俺は……。

大波のように押し寄せる後悔。

泣きながら去っていく美夜の背中を見つめながら、俺は唇を噛み締めた。