だから美夜を大切にしろなんて言ったら、美夜が俺に頼んだと勘違いして怒るに決まっている。

それに……他人の恋愛に首を突っ込むのは苦手だし、余計なことではないのかという疑問。

だからこの時の俺は、美夜をさりげなく勇気づけるしかなかったんだ。

けれどこんな考え方の俺と、美夜は真逆だった。

予想通り先輩にフラれた俺を、美夜は一生懸命慰めようとした。

それだけじゃなかった。

やっぱり俺に不満だらけだった先輩の会話に、美夜はキレてしまったのだ。


『人の真心なんだと思ってんの?!』


今思い出してもあの時の美夜の迫力に驚くが、同時にグッとくるものがあった。

俺のためにこんなに怒る美夜が……怒っているのに異常に可愛かった。


それからギュッと眉を寄せて、泣きながら美夜は俺を見上げた。


『龍……龍、傷付かないで。あんなの、気にしないで』

ドクドクと速くなる心臓と、熱くなる全身。

……コイツが、コイツが俺の彼女ならいいのに。

過度なダイエットで貧血を起こしたらしい美夜を医務室に運びながら思った。

……なあ、美夜。

もう明日斗なんてほっとけよ。

俺じゃダメかよ。

お互いに別の相手といたけど、今度は一緒にいないか?