だから、大切にしたかった、俺なりに。

違和感を覚え始めたのは、付き合い出して一ヶ月が過ぎた頃だった。

俺の態度や言葉に先輩が不満気だったりイラついた様子を見せ始めた。

一度機嫌が悪くなるといつも先輩は黙り込む。

話し合いをしようとしても最終的に、

『察してほしい事もあるのよ?見た目は逞しくて男っぽいのに……龍くんはやっぱり年下だよね』

これはさすがにこたえた。

見かけ倒しで子供っぽいと言われたのと同じだからだ。

一度うまくいかなくなると更にその上に不満がたまる。

先輩があまり笑顔を見せなくなっていくなか、それでも俺は彼女を大切にしようとした。

その頃同じように美夜も苦しんでいた。

自分に努力が足りないから明日斗が振り向いてくれないと思い込んでいた美夜は、イメチェンをしたりダイエットをしたり、とにかく頑張っていた。

俺はそんな美夜に苛立つ一方で、日に日にやつれていくアイツが気がかりになっていった。

明日斗は俺の言葉に耳なんか貸さない。

『女なんか信用できるかよ。信用できないのにひとりになんか絞れっかよ』

これは明日斗の口癖だ。

過去に何かあったのかも知れないが、明日斗はプライドが高い。

弱いところを人に見せるタイプじゃないし、例えば俺が忠告したからといって自分の信念を曲げたりはしない人間なのだ。