「最後に一つだけ。これは私の経験から学んだことなんだけど」

ここで一旦言葉を切ると、先輩は笑顔を消した。

「伝えなきゃ伝わらないわよ」

……伝えなきゃ、伝わらない……

じゃあね、と言って踵を返した先輩がドアの向こうに消えた後も、私はしばらくそのままでいた。

゚*.。.*゚*.。.*゚


午後三時半。

「美夜、早くトイレいきなよ?」

ホームルームが終わると理沙が私の席へとやって来た。

「帰り支度なんて後でいいから」

由依と亜美も何故か私を急き立てる。

「……トイレ?なんで?」

私が首をかしげると理沙があからさまに眉を寄せた。

「髪とかして脂おさえてパウダー&グロス!石井くんが三時四十五分に正門前に来るでしょ?!」

「あ!」

すると亜美と由依がキャッキャと騒ぐ。

「石井くんってさ、カッコよくない?!背高いし爽やかだし!」

さ、三人とも声が大きいっ!

その時ガタン!と音がして、私は咄嗟に斜め前の龍の席を見た。

……龍……。

眼に映ったのは席を立って教室から出ていこうとする龍の背中だった。

……今日はあれから……一言も話さなかった。