その時だった。

「ちょっと永瀬!瀬沼高校をひとくくりにしないでよ。陵兄ちゃんの友達はみーんな真面目ですぅ」

理沙が龍の後ろから頬をプウッと膨らませている。

「美夜はもうフリーなんだからね。とやかく言わないで」

「……来い」

「え、あ、」

話に割って入った理沙にイラついたのか、龍が私の手を握るなり身を翻した。

「ちょっと、龍、なに?!」

龍はズンズン私を引っ張って歩くと、校舎の一番北の手洗い場でようやく足を止めた。

見上げたその顔が、怒っている。

「……行くなっつってんの」

……嫌だ、行きたい。

「理沙が言ってたじゃん。従兄は真面目だって。だから大丈夫だよ」

「全員真面目だとは限らねーだろーが。とにかく行くな」

「やだよ。行きたい。もう明日斗とは別れてるし、たまにははしゃぎたいもん」

すると龍はあからさまに眉間にシワを寄せて私を見下ろした。

「……新しい男見つけたいからって俺の忠告聞かないって、どんだけ飢えてんだよ」

……え。

……今…なんて…?

驚いて龍を見つめると、龍は私から眼をそらして続けた。