……龍……?

「なあ、惚れる?」

「だから言ってるじゃん!龍の事好きな女子いっぱいいるし」

「……」

「……」

龍が私を見つめるから、私はそれが冗談じゃないと分かってもらいたくて、その切れ長の眼を黙って見た。

龍。龍は本当に素敵だよ。

恵まれたスタイルに、カッコいい顔。

それに、優しいもの。

真剣なのを伝えたくて、私は龍の真正面に座り直した。

「センパイ彼女なんかに龍はもったいない!龍みたいにイイ男なら絶対にもっと龍を大切にする彼女が出来るよ!」

ポカンとした顔で龍が私を見つめた。

それから空を仰いでクスッと笑う。

「なんだよ占い師かよ、お前は」

「ホントにそう思うもん!」

「もうイイや。早く食わなきゃ俺が全部食うぞ」

「ダメ!頂きます!」

晴れ渡る空の下で、今日楽しいのも龍のお陰だと思った。

そう……この時の私は、後にやって来る人生最大のピンチにまだ気付いてなかったんだ。