「ん。それにさ、もうフラれちゃってるじゃん、私!もう潮時だー。いやとっくに潮時過ぎちゃってるか」

「っ……」

言葉を返せないでいる龍が可哀想になったから、私は立ち上がると体操服を整えながら龍を見下ろした。

「ダイエットもイメチェンも、もうヤメ!疲れちゃった!」

グーンと太陽に向かって背伸びをすると、眩しくて眼を細める。

……そう。明日斗だって可哀想だよね。

「じゃあさ、今度うちに来ないか?」

「…え?」

意外なその言葉に眉をあげると、龍が決まり悪そうに視線を反らした。

「聞いてただろ。俺ん家、小料理屋なんだ」

「いいのっ?!」

「ダイエットやめるんだったらいいだろ?ご馳走してやるから来いよ」

「行くっ!」

なにこれ、凄く嬉しい!

「おっと、そろそろバレーボール試合だぞ。見に行こうぜ」

「ん!」

このときの私は、暗い森から抜け出せたような爽やかな気分だった。