センパイ彼女の件で傷付いてるはずなのに、なのに私を心配してくれるなんて。

「龍こそっ…龍こそ大丈夫なのっ?」

すると一瞬、龍が唇を引き結んだ。

それから、

「こっち来い」

龍は私の手を引くと、大勢が行き来する武術道場を出て部活棟へと足を進めた。

「半年前、告白されたんだ。先輩に」

石段に腰かけると、ちょうど駐輪場の屋根が日差しをカットしてくれて、涼やかな風だけを感じることができる。

そんな中、龍は私を見ずに続けた。

「同じ時期に何人かに告白されたんだけど、先輩は同じ部だし性格も他の女の子より分かってたつもりだったんだ」

黙って聞く私の耳に、小さくついた龍の吐息が聞こえた。

「最初の一ヶ月くらいは正直楽しかったんだ。けど、段々俺の態度にイラつく先輩の表情が多くなってきて。この結果も見えてたんだ。だから大してショックじゃないっていうか、もう前向いていこうって思ってる」

……龍……。

「お前が泣いてるのを見て思ったんだ。お前に比べると俺は…マジで先輩を好きだったかどうかわかんねーなって」

そこまで言うと龍は、隣に座った私に視線を移した。

「恋愛なんて当人同士の問題だから首突っ込まない方がいいと思ってたけど、お前見てたら考え変わったわ。俺、明日斗に言ってやるよ。随分遅くて悪いけど」

…龍…。