…なにやってんの?

不思議に思った私が声をかけようとした時だった。

「なんかねぇ、龍君って見た目は凄く男っぽくてカッコいいのに、純情すぎるのよ」

「えーっ、そのギャップがいいじゃん!草食系?」

「ギャップに萌えたのなんてほんの一ヶ月だけよ。だって女子だって……イロイロ経験したいじゃない?なんか、龍君といてもママゴトしてるみたい」

……嘘。

これって……龍のセンパイ彼女だ。

多分非常階段の下……よくみんなが話し込んでる物置スペースにいるんだ。

私達に気付いていないセンパイ彼女は、尚も続けた。

「空気も読めないしね。私ダイエットしてるのにさ、お弁当作ってくるんだよ?!」

「え?!龍君料理するの?!」

「家が母子家庭で小料理屋やってるのよ。で、母ひとり子ひとりだからさ、将来お店を手伝いたいんだって」

そう言ったセンパイ彼女の後に、周りの女子達の悲鳴が上がった。

「えーっ!一見クールで冷たい感じなのに素敵~!」

「……重いじゃんそんなの。要らないのにそーゆーの聞かされると断れないでしょ?超ストレス」

もう我慢できなかった。

頭に血が昇る。そう、一気に。

「人の真心なんだと思ってんの?!」

「きゃあっ」

「美、夜」