急がなきゃ。

屋上の重い扉を押して階段をかけ降りると、私は一気に正面玄関を目指した。

当然だけど中庭に出た時にはもう明日斗の姿はなかった。

見失いたくない。

正門まで走って、そこから外の通りを見ると、遥か向こうに明日斗の後ろ姿が見えた。

……どこに行くんだろう。

明日斗は後ろにいる私に気付いてない。

それをいいことに、私は小走りで距離を詰めた。

明日斗が振り返ったら、終わりだ。

バクバクと心臓が騒いでいて、痛い。

その時だった。

明日斗が交差点で急に立ち止まって両腕を開いた。

表情は見えない。

横断歩道には人が行き交ってるのに……なにやってんの。

そう思ったのはほんの一瞬だった。

……嘘。

明日斗の腕の中に女の子が飛び込んでいったのが見えた。

信じられない。

誰?!

抱き締められて、嬉しそうに明日斗を見上げているのは、誰?!

グッと胸が苦しくてムカついて、気付くと私は声を張り上げていた。

「明日斗っ!」

「……」

私に背中を向けている明日斗の両肩が一瞬跳ねた。