*Kissよりギュッと*

「龍っ」

気付いたら私は振り向いて走っていた。

そう、龍のところに。

「龍っ!!」

龍は驚かなかった。

それどころかとびきりの優しい笑顔で両腕を開いている。

早く来いと言わんばかりに。

大好き。凄く好きでどうしようもなくて、この想いをもっといっぱい伝えたい。

「龍っ!すごく好きだよ。ほんとに大好き」

腕の中に飛び込んだ私を、龍が見つめている。

「美夜、美夜」

切な気に呼ぶ龍を見上げて、私はありったけの笑顔で言った。

「龍、あのね、私と付き合っ、」

言いかけた私の言葉を龍が奪った。

「なあ美夜。すげー甘やかしてやるからさ、そばにいろよ、ずっと」

勝ったと言わんばかりに龍がニヤリと笑った。

「うん…うんっ」

返事を聞いた龍が、私を強く抱き締める。

瞳を見つめたまま、ギュッと。

そんな龍が好き。

こんな風に抱き締めて、甘く見つめてくれる龍が好きで好きでたまらない。

「……キスもしたいけど」

龍ったら。

ちょっと照れ臭そうにそう言った龍が可愛かったから、私はクスリと笑った。

「ん。して。でももうしばらくギュッとしてて」

「ん」

夏の空気と街に灯る沢山の明かりが、見つめ合う私たちを柔らかく包んでいた。






*Kissよりギュッと*
~end~