「――――蓮さん! 大変だ!」
そう鬼焔の人が部屋に飛び込んできたのは、それからすぐの事。その勢いに驚いていると、彼は叫ぶように言葉を続けた。
「不知火が、もう現れた!」
彼の知らせに、蓮さまも今までとは違う、厳しい表情で立ち上がった。
部屋にいても分かる。
遠くから聞こえてくる、バイクの重低音。音は徐々に大きくなり、振動になったように体に響いてくる。
やがてそれは爆音になり、うねるように倉庫中を包んでしまった。
「――――行こう、鈴ちゃん」
蓮さまに手を引かれ、私も立ち上がる。少し手に汗を感じた。彼も緊張しているのかもしれない。
不安に駆られきゅっと握り返すと、蓮さまは私に柔らかい笑みを返した。
「大丈夫、これで全部終わるよ」
それは何を意味するのか。
不知火が負けるのか、それとも鬼焔が……
私は蓮さまと手を繋いだまま、部屋を出た。