「――――俺はこの家に必要が無い……そのせいで、一時期はやけくそになって暴れまわってた事もある」
そうして蓮さまは『不知火』と出会った……
「でも今は、何か達観したというか……何も期待されていないなら、自由にやって、俺なりの生き方を見つけようと思ってるんだ」
すっかり畳み終えた着物を、蓮さまはクローゼットを開けてその中にあった桐の箱にしまった。
蓮さまの中にも、闇はあった。
でも彼は不知火に出逢えた事で、それから抜け出せたんだ。
私にも、抜け出せるんだろうか。
真っ暗なこの闇の中から。
今は、ほんの小さな光すら見えないけど……
それから蓮さまは窓辺へ行き、その窓を開けた。さあっと湿った風が部屋の中へ入って来る。
雨はやっと小降りになり、雲の切れ間から夕陽が少し見えていた。
やっぱり……蓮さまに帰ってきて欲しい。
そして葉月を支えて欲しい。
心からそう思った。