あまりさんののっぴきならない事情

 



「ほんとだ。
 素敵な月です」
とあまりの声がする。

 ふうー、という満足げな吐息と、水音もした。

「……せめて月が見たいんだが」

 結局、海里は目隠しをさせられ、あまりに手を引かれ、露天風呂に入っていた。

 月もあまりも見えん。
 意味がわからないんだが……と思う。

 しかも、身体が触れないように、狭い露天風呂の中なのに、ギリギリの距離を取られている。

「せめて手でもつなごうじゃないか」
と恨みがましく言うと、

「じゃあ、はい」
とあまりは手を握ってくるが。

「それは握手だ。

 ……イギリスでは、人と出会ったら、まず、握手をするが。

 これは、武器は持っていない。
 危害は加えない、という意味だ」
と言って、握手したあまりの手を振る。

「あの……今にも加えられそうなんですけど」
と少し察しのよくなったあまりが言ってくる。