あなたに呪いを差し上げましょう(短編)

「つまらないかどうかはわかりませんよ。あなたは声もお綺麗だ」

「星明かりの下で見るかんばせがなぜか麗しく見えるように、夜の深さに冷えた耳には、なぜかよく聞こえるのでございましょう」

「いただいた紅茶のおかげで、日向にいるようにすっかり温まっていますよ」

「お身体を冷やされなかったのでしたら、こちらまでご案内した甲斐がありました」


話をずらしてばかりのわたくしに、アンジー、と困ったような呼びかけが繰り返される。

でも、顔を見せるわけにはいかない。特徴的な目と髪の色がわかったら、後で名前を知られてしまうもの。


「……わたくしの顔など、ひとりぼっちの寂しさに長年首を垂れていた、ただの取るに足らない顔です。あなたさまにお見せできるものではありませんわ」

「これは手厳しい」


苦笑したものの、手元はこちらに伸ばされたままだ。


「……ルークさま。わたくしに、見栄を張らせてくださいませ。醜い顔を見られたい女はおりません」


頑なな態度に察したらしい。


「何か、傷でも?」