あなたに呪いを差し上げましょう(短編)

ルークさまは柔らかく噴き出した。


美しい翠が丸い弧を描く。欲しいのは話し相手だと宣言して正解だったらしい。


「ええ。私でよろしければ、お相手いたしましょう」

「まあ。ほんとうに……!」

「はい、ほんとうに」

「ありがとう存じます、嬉しいですわ」


どうせ面倒ごとから逃げられないのなら、少しでも利がある方がいい。

ルークさまはにっこり笑って返事に代えた。


しばらくがたごと揺られると、到着したらしい。御者に声をかけられて、手を借りながらそっと馬車を降りる。


物珍しげな視線を背中に浴びながら、人ひとりがようやく通れるような踏みしめただけの小道を先導し、はびこる緑をくぐり、重く鈍い門を押す。

屋敷に着いてすぐ、手持ちの中で一番上等な茶葉をすくって、熱いお茶を淹れた。


「お体が冷えたでしょう。どうぞ」

「ありがとうございます。アンジーは、こちらには、いつから」

「随分昔のことで、忘れてしまいましたわ。お茶はお熱くありませんか」

「ええ、とても美味しいです」

「それはよかった」


素朴な菓子をつまみ、手持ち無沙汰に紅茶を傾けて、ぽつりぽつりと話をする。


お互い探り探り話題を振るので、遅々として進まない。それでも、けして嫌な気はしなかった。