あなたに呪いを差し上げましょう(短編)

「アンジー。とてもありがたいお話です。急な話にそのようなお返事をくださること、大変ありがたく思います」


ルークさまは念入りに前置きをして、わたくしを見据える。


「ですが、あなたはよろしいのですか。私が言えたことではありませんが、その……真夜中に男と二人きりでは、あまりに外聞が悪いのではありませんか」


あまりに意外すぎて、思わず一瞬呆けてしまった。


「まあ。ありがとう存じます」


思いもよらない心配に、お優しいのですね、と喉を鳴らしてころころ笑った。


本当にこのひとは、よほどの世間知らずか、この国のことを知らないひとであるらしい。


「あなたさまの先ほどのお言葉は、隠れ場所を提供して欲しいという意味かと思いましたけれど、違いますでしょうか」

「違いませんが……」


でしたら大丈夫です、と笑った。


「ほんとうに狭いところですが、少なくとも隠れ場所にはなりますし、絶対に二人でいるところは見つかりません。そもそも、わたくしに外聞も何もございませんわ」


これほど呪われていると噂になった以上、言い伝えが力を持つこの国では、もはや結婚は望めない。


誰も呪いなど継ぎたくないだろう。


呪いはいまだ本当に存在するのか定かではないけれど、言い伝えがあまりに有名すぎて、どうしても世間の目が厳しくなる。

生きにくくなるのは確定だ。


そもそも外聞なんて、忌子という時点で地に落ちている。