あなたに呪いを差し上げましょう(短編)

「それはどのような意味でしょう」

「私は誘われていますか」

「いいえ、ちっとも。あなたさまのご要望でしょう」

「残念ながらそうですね」


全く、何を言い出すのかと思った。


確かに、よほど親しいとか、知り合いだとかでないと、未婚の男女が二人で馬車に乗るなんてなかなかないけれど、今はふざけている場合ではなさそうなのはルークさまの方だと思う。


「私としては、もう少しここにいてくれませんか、という意味でお誘いしたつもりだったんですが」

「それは承知しておりますが、残念ながらわたくしはもう少しもここにいたくありません」


きりりと真面目に答えると、困った顔をされた。


「……わかりました。あなたがそれでよろしいのでしたら」

「もちろん構いませんわ」


ルークさまが神妙に頷いたのを確認して続ける。


「近くにわたくしの屋敷がございます。宴がひと段落するまで、そちらにいらしてはいかがでしょう。馬車で片道三十分ほどですわ。宴が終わる三十分前頃に使いを寄越させましょう」


終わる頃にささっと戻ってしまえば、帰りの時間は誤魔化せる。


非常識なことは分かっていながら提案すると、予想通り面食らった顔をされた。