「で、ここ3階は一番向こうにある空き教室で鍵かかってるから入れねーから。」


「あの空き教室な。鍵ないやつだろ?
あれ鍵交換しねーのかな。」


「金ないんじゃね?」


「いや、どんだけねーんだよ。
校長のポケットマネーとかでもいいんじゃねーの?」


まぁそうなんだけど。


「4階は吹奏楽部だから部活入るならこの上だけど、はいんねーならとくに行くことはない。

以上、終わり。」


あー疲れた。腹へった。
さっさと帰ろ。


「仁科ちゃんちどこ?送ってくよー?」


智樹がそう言っても、頭を下げてさっさと帰っていった。


「なんだあれ。謎。
お礼も言えねーのかよ。」


「まぁ転校初日なんてあんなもんじゃん?
俺も転校生だったからちょいわかるわ。」


……そういやこいつ、小3のとき引っ越してきたんだった。
転校生ねぇ…


「俺もさぁ、最初全然馴染めなかったじゃん?
小学生だったのに。

あのとき、
"でけー声で挨拶してみろよ。そしたらみんなも返してくれるから"
って大翔に言われて、すげーでかい声で"おはよう"って言っただけですぐ仲良くなれたけどさ。

どうしたらいいかわかんないんじゃね?
高校生になっちゃうと余計に友達の作り方なんて、わかんなくなったりするじゃん。

しかもずっと聖女なら男に対して免疫ないかもだし。」


「……ふぅん。そんなもんか。」


「まぁさ、こっちから歩み寄るしかないんだよ!転校生なんて、その場にいるだけで目立つんだから。」


「別に仲良くなるつもりもねーけど。」


たとえ男に対して免疫がなかったとしても
たとえ転校初日で緊張してたとしても

お礼とか挨拶くらい、できるだろ。
高校生なんだからよ。