心優がまた一歩、普通の女子高生に近づいて
俺はまた嬉しくなったのに


「じゃ、バイト頑張れよ。大翔。」


「また明日ね。」


俺の彼女と俺の友達は今日も一緒に帰るんだと。
俺だけバイトだよ。ったく。


「…じゃーな。」


前まであの二人が一緒に帰ってるのも平気だったんだけどな。


……帰るか。バイト遅れるわ。










━━今日のバイトは居酒屋。
つーことで、駅の方まで歩いて向かっていた。

人が多くて、歩きにくい。


スマホで電話してるやつ
友達と爆笑してるやつ
店から聞こえる店員の声に
でかい音楽。

いろんな音が聞こえる中


「━━大翔…?」


俺の名前を呼ぶ、懐かしい声が聞こえた。


「……美空(みく)」


「美空、知り合い?
超イケメン!」


「元カレ!」


「元カレ!?
いいなぁー、こんなイケメンと付き合ってたなんてー」


「でしょ?
自慢の彼氏だったんだから!」


久しぶりに俺の目の前に現れたのは、中学の頃から付き合っていた佐伯美空。

俺の一番嫌いな女はあの頃と変わらず、俺と付き合っていたことを友達に自慢する女のままだった。


「でもこんなイケメンと別れちゃうなんてもったいない~」


これ。これだけは全然理解できない。
見た目がよければ全て良し、なのか?

どれだけ美人だとしても、浮気しまくる女なら俺は絶対に無理だ。

女にはそういう考えがないのか?


「ねぇ、スマホ変えた?
また連絡先教えてよーっ。」


「バイトだから。じゃ」


まともに会話もしたくなくて、俺はさっさと歩き出した。

連絡先?
誰があんなやつに教えるか。

あいつが嫌いすぎてスマホも変えて、中学のやつから漏れるのが嫌で智樹しか教えてないっつーのに
あいつなんかに教えねぇ。