それからの私の日課は、毎朝おにぎりをつくることに加え、昼休みに毎日変わる彼らのたまり場を見つけ出すことになった。
今日も匂いの元をたどって私は旧校舎を歩く。


「……なんで昨日と違う教室なのよ!」

「同じとこ使ってるとバレやすいじゃん」


変なところだけ頭が回るんだから。
飄々と言ってのける男の頭を叩いてやりたい。

膨れて見せたら、仲道くんがホカホカの湯気が上がった紙コップを、酒田くんが紙パックのジュースを同時に差し出した。


「そう怒るなって。賞味期限きれてっけど、飲めるからダイジョーブ」


どうやら酒田くんが持ってくる飲み物や食べ物は、すべて廃棄処分となる賞味期限切れの商品らしい。
不思議に思って聞いてみたら、家はコンビニをやっていて毎日のように処分しなければならない商品が出るのだそう。


「コンロはいつから持ち込んでるの?」

「入学して……しばらくしてからかな」

「よくばれないね?」

「知ってる教師もいるけどなぁ。化学の太蔵(たいぞう)とかは見逃してくれてる」


ああ、太蔵先生は自分も酒好きを公言し、たまに酔っぱらったまま学校来たんじゃないのって感じの不良教師だからなぁ。

この学校の先生たちは、ヤンキーたちのことは基本放置だ。

校長や教頭のような責任を負う立場の先生は、大きなもめごとさえ起こさなければそれでいいという意識のようだし、そうでない先生は太蔵先生みたいに面白がってるか、怖がっているか。

生徒のほうもそれで慣れちゃってるし、ヤンキーたちは自分たちがサボったりはするけど、基本他の生徒に嫌がらせのようなことはしない。まあ、校舎の外周とかランニングしていると煙草のカスとかが見つかったりして、それはいいのか?って思うけど。