お姉ちゃんからすれば素気ない……だけど私からすれば当然の反応に、彼女は肩を落とした。
晩ご飯のあとで食べようね! との言葉にはいはいと適当に返事を返し、背を押して部屋から追い出す。
ぱたん、と目の前には迫るように木目の扉が入りこんだところで、ようやくほっと息を吐き出す。
嵐のように慌ただしい人。
いくつになっても幼い子どもみたいで、自由でなににも囚われない。
愛嬌があって、庇護欲を刺激する、そんなお姉ちゃんのことが私は昔からずっと……苦手だ。
苦虫を噛みつぶしたような表情とはまさに今の私だと思うほど顔を歪め、眉間に深くしわを刻む。
扉に額を押しつけた。
変に私を構いたがるお姉ちゃんのことなんかに気を取られている暇なんてない。
それなのに、学校のことを思い浮かべるとともに、はたと気がついてしまう。
『よろしくね、春ちゃん』
ああ、そうだ。なるほど。
明らかに違う人種だというのに、私に声をかけてきた同じ保健委員の櫻。
お姉ちゃんに似ているんだ、あの男は。
恋に生きてるような軽いところも、いつも適当にへらへらしてるところも、なにがあっても「まぁ平気でしょ」とそれだけでなにもかも済ましてしまう能天気なところも。
ばかで、ばかで、相手になんてしていられない。
そのくせどうしてか縁が結ばれて離れられない。
そのことにどうしようもなく、腹が立つ。
相容れない存在で、可能な限り距離を取ろう。取りたい。取らなくちゃ。
そう思って、勉強だけを黙々としていたのに。
それなのに。

