ザワッと生温い風が強く吹いた。
チョコレート色の髪がサラサラと揺れれば、大嫌いなその瞳がより鮮明になる。
「それはっ、アンタが意地悪で、いつも嫌なことばっかり言ってきて……ちっとも優しくなんかなくて……、」
「確かにお前からしたら俺は優しくなんかねぇよ。ガキの頃からこんなんだし?」
「……っ、」
ふと視線を向けた途端、伏し目がちな表情をした桐生秋十が手を伸ばしてくる。
そして、迷うことなく私の頬にそっと触れた。
ビクッ、と大袈裟ともとれる反応をする私を見て、桐生秋十は少しだけ困ったような表情を浮かべる。
「……変わってねぇよ。俺は、お前のことばっかり見てるから」
ーーードキッ
低く囁くような言葉に鼓動が加速する。
それは、どういう意味で言ってるの……?
「自分でもヤバいくらい。俺は今も昔もそうだから。何も変わんない」
「なっ、」



