「本当に優しいわね、秋十くんは」


「……、」


「これ、お隣さんにもらったお菓子なんだけど、お礼に秋十くんに持っていきなさいよ?」



私の大好きなバタークッキーを大魔王への手土産にしろと………?


パタンッ、と玄関の扉が閉まりお母さんは行ってしまった。


ま、マズイ……!


実は、お母さんは未だに桐生秋十のことをいいヤツだって思ってるから、本当の正体なんて口が裂けても言えない……。


度々、アイツのことを聞かれるけど、私はなんとか誤魔化してるんだ。


いくら大嫌いでも借りたもの?はきちんと返さないとなぁ。


でも、アイツん家に行く勇気がない……。



困り果てた結果、このまま返さないなんてダメだよね?と、ひーちゃんにラインで相談すると、“有罪!”とスタンプが返ってきた……。



腹をくくった私は渋々ブレザーと手土産を持ってアパートを出た。