もしや、これ……教えてくれてるわけじゃ……。
ハハッ、まさか、ありえないって……。
疑いの眼差しを送る私に、桐生秋十はノートと私を交互に見る。
目で合図をしてくるけど、罠かもしれないって勘ぐってしまう。
でも、ブルの顔面と鼻息の荒さに負けた私は、そのノートに書かれた文字を読み上げる。
「お、おう。正解だ……、」
う、嘘……当たった……!?
ブル以上に私自身がビックリだよ。
「だが、今後はしっかり顔を上げて授業に集中するんだぞ!」
ブルは頬のお肉を揺らしてそう言うと、のそのそと黒板の前へと戻っていった。
大魔王はなんで……答えなんか教えてくれたの?
おかげで助かったけど、昨日のことといい、桐生秋十は私を助けるような人じゃないのに……。
チラッと隣を見れば、桐生秋十はもう何事もなかったかのように、頬杖をついて教科書に目を落としていた。



