ーーー数日経ったある日の午後。
「ーーー…菜、」
私の髪に触れる誰かの手が温かい。
……んぅ、お母さん、まだ寝てたいのに。
「仁菜」
やだなぁ、お母さんってば、いつからそんな男の人みたいな声になったの?
「ん……、」
周りの声が聞こえてきて頭が半分起きてくる。
「いいのか?起きないとキスするよ?」
キス……。
キス……?
キス……!?
ーーーパチッ!!
悪魔が囁く声にゾワっと身震いを起こした私は完全に目を覚ました。
そして、私の視界に飛び込んできたのは……
「おはよ、仁菜。すげぇ気持ちよさそうだったな?」
「………っ、ぎゃあああああ!!」
私の視界を覆うのは桐生秋十の顔だった。
なんで、コイツが…………!
あまりの近さに悲鳴をあげるのも無理はない。



