とにかく明るいお父さんは小学校の先生だった。
子供達にとても人気があるんだよって、お母さんが誇らしげに話していたのを覚えてる。
人気がある先生……私まで嬉しくなったんだよ。
そんなお父さんが亡くなったのは一年前の7月。
小さくだけど、地元の新聞にも載った。
私は三年生の夏休み、ずっと塞ぎ込んでいた。
最愛の人を亡くして前を向くのに時間なんていくらあっても足りないのに、それでもお母さんは前へ進んだ。
朝早くから働ける若葉町のカフェの仕事を親戚の人に紹介してもらい、急遽引っ越しが決まった。
いつも笑顔で「お母さん、仁菜が大好きだよ」って言ってくれて……
私も同じように返したいのに、後悔に押し潰されて下を向いたまま前で。
最期にお父さんにぶつけた冷たい言葉が、鉛のように心の中にずっしりと残ってるんだ。
なんで、あんなこと言っちゃったんだろう。
じわり、と涙が溢れてきて、ボロボロと零れ落ちて止まらなかった……。
メソメソ泣いたらお母さんが心配するのに……。
こんな顔じゃ帰れない。
私が泣き止む頃、辺りはすっかり薄暗くなっていた。
……あれ、私。
どっちの方向から来たんだっけ?
ドクリっと、一気に不安が沸き上がった。
どうしようって、怖くなったその時。



