「うわぁん……っ、怖いよー!ママー!」



へっ……?

背後から聞こえた大きな泣き声に振り返る。

な、なに……?



夏祭りの会場のど真ん中。

押し寄せる人波もピタリと引いて、誰もが目を奪われた。



「降ろしてよ……こ、怖いよぉ……!!」



私は見上げた。

ここにいる人はみんな、夜の空に抱き上げられた男の子を見ている。


その男の子が私よりも高い場所で泣いてる。



「おい、もっとでっかい声で呼ばないと、お前の母ちゃんに見つけてもらえないぞ?」



ぐーんと空に押し上げるように男の子を抱き上げてる、きみの姿。


きみは、そうやって不器用だったよね。



ーーードキンッ


私の瞳はきみに奪われる。


きみの声が私には聞こえたよ。