少しでも動けば触れてしまいそうな距離。
 

形のいい唇も、羨ましいほど長い睫毛も、大嫌いなその黒い瞳も、ものすごく近くて……。


ドクッ、と。

鼓動が波打ったと同時、私は息を呑んだ。



待って……今なんて言ったの……?


私の彼氏になってやろうかって………?



「…俺、顔も悪くないだろ?」



サラリと流れる前髪。   

ムスク系の甘くて濃厚なシャンプーの香りが鼻をくすぐった。


女の子達が騒ぐのも頷けるこの抜群の容姿は、確かに申し分ない。


悔しいけど……認めたくなんてないけど、顔は間違いなくカッコいいんだ。


そこらのモデルなんかよりも、ずっと整ってる。