*
ひーちゃんと晴くんが帰ったあと。
颯太と二人きりになった教室では蝉の声がやけに大きく聞こえた。
「なぁ、ニーナ。いいのか、呑気に夏祭りなんか行って?」
「なんで……?」
「ハァ?だって今日までだろ。大魔王との勝負はどうなったんだよ?」
「うっ、」
私の一番痛いところを衝いてくる。
今日までに彼氏をつくって決別するって目的に向かってきた。
大魔王……を、忘れてしまえたらって。
元々勝ち目のない勝負だってわかっていたけど。
「……や、やだな。颯太……私の負けだって、わかってるクセに……もーっ、」
無理に笑っていつもの調子で答える。
だって、その方が胸が痛まなくて済む。
「は?」



