やめて……。
もう、なにも言わないでほしい。
お願いだから。
「だって、お前のせいで父親が死んだんだろう?」
その言葉が振り下ろされた瞬間、身体中に稲妻が流れたような衝撃を受けた。
今、なんて………?
「そうだろう、蜷深?」
呼吸が止まったみたいに私は息も出来ない。
誰も知らないはずだと思ってた。
記憶に鍵をかけて、心の奥にしまい込んでいたはずだった。
お父さんを忘れたいんじゃない。
大好きで大好きでたまらなくて。
だから、思い出すと胸が千切れそうで、後悔に押し潰されてしまういそうで。
「熱中症でぶっ倒れた父親を、見捨てて家に帰っちまったんだろう?」
自分を許せなくて苦しかったんだ。
あの茹だるような暑い夏の日。
お父さんの優しい手を、私は思い出した。



