「蜷深に父親がいないことも、小学校の先生やってたことも噂で聞いて知ってたけど……でも、まさか。死んでるなんて知らなかったよ?」



静かな夜に山本くんの乾いた声が響く。
 
なんで、お父さんの話を出してくるの……?



「その理由を不謹慎だと思ったけど、蜷深の小学校時代の奴らに聞いてみた。けど、知ってるヤツはいなかった。一人も……」



ただの一度も、誰かに話したことはない。


お父さんが死んでしまった理由を聞いて回るなんて、どこまで無神経で、どこまで非情なんだろう……。


怒りと供にキシキシと胸が軋んだ。



「でも、オレは見つけちゃった。林町に住んでたって話してくれたから。図書館で当時の新聞記事を読んだよ」



やめて………。

   
そう言いたくても声が出てこない。